ソニー生命保険が2017年に行った調査によると、男子中高生の「将来なりたい職業」では、”ITエンジニア・プログラマー”が1位に輝きました。その事実に大きな衝撃を受けるとともに、私たちIT産業に従事するエンジニアが、ついに男子中高生にとっての憧れの職業になったことは嬉しくも思います。

調査対象は”ネットエイジアリサーチのモニター会員”とのことで、母集団自体がITと親和性の高い子が多かったのかもしれません。しかし、かつてはプログラマーやシステムエンジニアといった職業は、”変わり者”とも言われるような、ちょっと変わった人が目指すような職業という認識が強かったため、この20,30年ぐらいで大きくITエンジニアのイメージが変わったことを知ることができました。

このようにPGやSEなどのITエンジニアのイメージが良くなった理由について、推測していきましょう。

労働環境が良くなった(残業時間の減少)

かつてITエンジニアは3K(きつい・厳しい・帰れない)の職業なんてことも言われておりました。それは決して冗談ではなく、残業続きで徹夜で作業するなんてことも日常茶飯事だったようです。

しかし現代のITエンジニアの労働条件は格段に改善されてきています。残業ほぼゼロという職場もありますし、残業規制という社会的背景もありますので、大手企業ほどコンプライアンス的にも労務管理はしっかりと行っています。

ただ全ての開発が順調に進むわけでもありませんし、納期前にはバタついてしまうこともあるでしょうが、残業時間の減少という意味では、一昔前よりも圧倒的に労働環境は良くなっています。

他職業に比べて給料が高い

ITエンジニアは他職業と比較しても、平均賃金は高めです。

ただしプログラマーやシステムエンジニアよりも高い給料をもらう職業はいくつもあります。ですがそうした高給取りの職業は、だいたい良い大学を卒業するか、特別な資格を取得していないとなれない職業ばかりです。

ITエンジニアは大学を卒業していなくても、専門学校卒業だとしても、最終学歴が高卒だとしてもなれる職業です。もちろんITエンジニアでも、良い大学を卒業すれば大手ソフトウェア企業やメーカー系に就職でき、その分賃金も高くなりますが、中小ソフトウェア企業だとしても、他職業に比べれば賃金は高いです。

多くの人にチャンスがあり、給与面も良いということも、人気の職業になっている要因のひとつでしょう。

将来的にも需要がある産業

昨今ではAI(人工知能)の登場によって、将来的になくなってしまう職業が話題に上ることも多いですが、IT産業は今後も需要が増していくことが予想されるため、それを支えるエンジニアも比例して需要が増していくことでしょう。

現時点でも各ソフトウェア企業の人材獲得競争は熾烈なものになっていますし、さらに需要が高くなるようであれば、給与面も向上することが予想されます。

斜陽産業よりも将来性のある産業に人気が集まるのは当然のことなのかもしれません。

デジタルネイティブ世代の登場

今の10代は、幼少のころからITを身近に感じながら育ってきた世代です。”デジタルネイティブ”なんて言い方もされます。知育玩具ですらデジタル化されるものが増え、勉学においてもコンピュータやタブレットを活用する時代です。もはや今の時代、「IT」は無くてはならない教育インフラなのです。

それに2020年には、日本の小学校でもプログラミング教育が必修化される話も出てきていますし、小学生向けプログラミング教室なども増え、幼いときからプログラムというものに触れる機会がますます多くなりそうです。

そうしたITに触れる環境が増加していることも、ITエンジニアの人気上昇の理由の一つになっていることでしょう。

ビジネスの世界で成功を収めるエンジニアの登場

各種SNSやYouTubeなど、ITを駆使した画期的サービスが多数登場しています。そうしたサービスとともに、マーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)などのように、これまで縁の下の力持ち的な存在だったエンジニアに注目が集まることも多くなりました。

かつてはITエンジニアというと、コンピュータ少年のような、ちょっと変わった人が就く職業というイメージしたが、ビジネスの世界で成功を収めるエンジニアが注目を集めることで、「ITエンジニア = 格好いい職業」として認知されることが多くなった気がします。

中高生がなりたい職業というのは、憧れの職業という一面もありますので、こうした職業イメージの向上というのは、非常に大きいと思います。

 

おわりに

さまざまな要因はあるでしょうが、プログラマやシステムエンジニアといったITエンジニアは、非常にカジュアルな職業になってきたなと感じます。より身近な職業になったことで、ITエンジニアになりたいと思う中高生も増えたのでしょう。

これからのIT産業の需要は拡大する? それとも縮小する?」でもご説明しているように、今後はIT産業の需要もまだまだ増加すると考えています。国家のIT教育強化という方針もありますので、ITエンジニアの職業イメージが、今以上に良いものになっていければと思います。