自社システムの開発をソフトウェア企業に依頼した場合、決して安い金額では発注できません。小規模の開発案件だとしても、数十万円~数百万円規模になってしまい、開発規模が大きくなれば数千万円~数億円の予算が必要になることもよくある話。
よくお客様からは「なぜそんなに高いのか?」と聞かれることもありますが、決してお客様をだましてぼろ儲けしようと企んでいるわけではありません。システムが高くなってしまうその理由について、ご説明していきたいと思います。
システム開発費用は人件費の積み上げで決まる
システム開発は原材料や仕入れなどが発生しないため「開発にかかる予算 = システムが出来上がるまでにかかる人件費」だと思ってもらえれば大丈夫です。
それでも「人件費にしても高すぎじゃない!?」と言われることも多いですが、実作業を行うのはプログラマーやシステムエンジニアといった専門職の人たち。飲食店スタッフや事務仕事とは違い、長年の経験の中で専門的なスキルを身につけているプロフェッショナルです。
誰でもすぐにできるような仕事でもないため、どうしても人件費はアルバイトのような人材と比較すると高くなってしまいます。
人月(にんげつ)計算で見積もりを作成する
お客様からシステム開発の依頼を受ければ、まずはお見積もりを提出するわけですが、見積額は人月計算で求めます。「人月(にんげつ)」というのは業界外の方にはなじみが薄いかもしれませんが、開発にかかる人手の数と考えてもらえれば結構です。
例えば1人のエンジニアが1ヶ月かけて終わる仕事だと1人月という計算になります。1人のエンジニアが3ヶ月かけて終わる仕事なら3人月。逆に3人のエンジニアが集まって1ヶ月で終わらせられる仕事も3人月となります。大規模開発になればなるほど多くの人手を要するため、人月の数字も大きくなります。
そして「人月数 × エンジニアの月間単価」が開発総予算となるわけです。5人月の仕事でエンジニアの月間単価が60万円なら、300万円の開発予算となります。
エンジニアの単価もそれぞれ
エンジニアの月間単価についてですが、ITエンジニアも技術職ですから、人によってスキルレベルが異なります。そしてスキルレベルの高いエンジニアのほうが、より高単価となるのです。
ですが見積もりをご提出する際には、個々のエンジニアのスキルをみるよりも、システムエンジニアとプログラマーという2つのレベルに分けて考えることが多いです。
※システムエンジニアとプログラマーの違いについては「プログラマーとシステムエンジニアの違いについて」にてご説明しております。
プログラマー1人月の単価はだいたい40万~60万円ぐらい。システムエンジニア1人月の単価は60万円~80万円ぐらいが相場でしょう。
大企業になればなるほど単価は高くなる
エンジニアの単価については、大企業になればなるほど高くなる傾向があります。それはなぜかと言うと、大企業が開発案件を受注した場合、中小のソフト企業に仕事を外注することが多いからです。
つまりお客様から70万円の単価で受注して、下請け企業に70万円で発注していては利益がでません。そのため大企業ではプログラマーが70万~90万円、システムエンジニアで90万円~120万円ぐらいが相場なのではないでしょうか。
結局は中小企業のエンジニアが開発を進めることも多く、あまり大企業に依頼するメリットは感じられないかもしれませんが、信頼度や会社の格を考えるなら意味がないこともありません。「システムの開発・導入はどこに依頼すればよいのか」でも説明しておりますので、気になる方はご覧ください。
プログラム以外にもエンジニアの仕事は盛りだくさん
お客様の要望を聞いて、プログラムをして納品するだけなら、システムも大幅に安くなることは間違いありません。しかし品質の高いシステムをつくるには、それだけではいけないのです。
ひとつのシステムを形にするには、要求分析、要件定義、外部設計、内部設計、プログラミング、単体テスト、結合テスト、総合テスト、受入テストなど実に多くの工程をこなして、質の高いシステムが完成します。皆さんがイメージするような、プログラム言語を使用してプログラミングをする工程は、実は開発工程の2割程度でしかありません。2週間あればコーディングできてしまうようなシステムでも、要求分析から始めていくと2ヶ月ぐらいかかってしまうため、結果的に総費用は高くなってしまうのです。
それであれば「設計もテストも省略して納品してもらった方が助かるわ」と思われるかもしれませんが、工程を省いてしまうと、結局はお客様の求めている機能と違ったものとなってやり直したり、バグが見つかってその対応に追われたりしてしまいますので、結果的にはしっかりと工程をこなしてシステムを形にしていった方が、低予算で収まるのです。
ちょっとの修正も安くありません
システム導入後に「ここの計算方法を修正したいな」とか「追加の機能がほしいな」と思うときは必ず発生するでしょう。そうした場合もお客様にとっては修正範囲はわずかかもしれませんが、エンジニアにとっては多くの作業を必要とする可能性があります。
例えば入力項目をひとつ追加したいと要望を頂いた場合、お客様にとっては入力ボックスをひとつ追加するだけかもしれませんが、エンジニアにとっては以下の作業が発生します。
- 影響範囲の洗い出し
- 入力画面の修正
- 内部の処理ロジックの変更
- データベース内の項目追加
- 追加項目に対してのテスト
- 修正箇所以外の部分が修正前と同じ動きをするかのテスト(デグレードチェック)
こうしてみると、ちょっとの修正でも予想以上に手がかかってしまうのがお分かりでしょうか。このような作業も人月計算をして、お見積額をご提出することになります。
おわりに
システムが高い理由をご理解いただけましたでしょうか。システムとは目に見える部分だけでなく、目に見えない部分も作りこんでいくため工数がかかってしまうもの。しかし、だからこそ質の高いシステムが出来上がるのです。
当社としてもお客様から頂く費用は、提供する技術に対する対価という考えておりますので、お客様がシステムのことが分からないからといって、不当に高い金額でお見積もりを提出することはありません。システムの導入にはある程度の予算が必要ということだけ、頭に入れておいていただけますと幸いです。
【株式会社キーシステム】
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