システムエンジニアという職業も、その実態を細かく分類すれば、専門領域みたいもの別に分けることができます。たとえば汎用機(COBOLやAS400など)に長けた技術者もいれば、制御系の開発(C言語を用いた組込みソフトウェアなど)に長けている技術者など。
個々のエンジニアはそれぞれで得意な開発領域を持っているものですが、今回は自治体向けSEと呼ばれるような、公共団体や地方自治体向けの開発・保守を行うシステムエンジニアに求められるスキルについて、ご説明していきましょう。
開発スキルよりも業務知識を優先
公共・自治体向けエンジニアに求められるスキルですが、その特徴として顕著なのが開発スキルよりも業務知識を優先的に求められることです。システムエンジニアですので技術的な知見も必要ではありますが、それよりも業務知識を蓄えているということが重要なのです。
例えば法改正対応のためのシステム改修案件が発生した場合、既存のシステムはJavaとOracleで作られているものとします。そこで改修対応にあたるエンジニアとして、以下のような2名の技術者がいたとしましょう。
- JavaとOracleでの開発経験豊富な技術者
- 当該業務の業務知識が豊富な技術者
一番の理想は前者と後者、双方のスキルを持ち合わせている技術者ですが、そのどちらかのスキルしか保有していない技術者がいた場合、後者の業務知識が豊富な技術者をまずは確保したくなるものです。(もちろん担当する工程にも影響はされますが・・)
業務知識を優先する理由
公共や自治体関係の開発・保守業務にて、開発スキルよりも業務知識を優先される理由ですが、国の制度を知っていることで、きめ細やかな開発・保守業務を行える。ということがあるのではないかと思っています。
もちろん上記のようなことはその他の民間系の開発(製造業系や金融系など)でも共通して言えることではありますが、民間系の場合、固有のお客様先の中でしか通用しない常識も多々存在します。
しかし公共や自治体の業務であれば、各県や市町村によって条例の違いなどはあれど、根本の制度自体は国が画一的に定めております。担当する団体が変更になったとしても、過去にも経験した業務であれば、制度自体に大きな違いは無いので、これまでに培ってきた業務知識を存分に活かしながら業務に取り組むことができるのです。
プログラミングレベルの仕事はその他の人間でも対応が可能
業務知識を豊富に備えている技術者が設計を行えば、あとは設計書から実体を作り出すプログラミングの仕事が待っています。しかしプログラマレベルの仕事であれば、昨今ではオフショアで海外に発注することも可能で、わざわざSEが手を動かす必要もありません。
またパッケージシステムであれば、パッケージを開発する部署に設計書を送付し、SE作業としてはパッケージ部署から上がってきたプログラムの受入れテストで済んでしまうこともあります。
上記のような開発体制であれば、ますます技術的スキルよりも業務知識が優先されることになります(技術的な知見がなければ、本当に良い設計をすることも難しいですが)。
保守業務は業務を知っていないとお客様と会話ができない
また純粋な開発業務だけでなく、お客様の運用・保守業務に関わることも多く、業務知識を蓄えていないと、お客様と会話することすら難しくなってしまいます。
例えば地方自治体向けの基幹システムであれば、住民税や国保税などの税系システムもあり、課税計算など複雑な制度の下にシステム化されている業務もあります。もしシステムが不具合などを起こしてしまった時、お客様から計算根拠などの説明を求められても、制度そのものの仕組みを知っていなければ話になりません。
運用・保守業務の中でも、何が良くて何が悪いのか、そうしたことを判断するためにも業務知識は大事なのです。
業務知識を持っていること = 経験豊富な証
今の時代、便利なインターネットを使えば、国の制度もある程度知ることができます。しかし業務で通用するほどの深い部分の業務知識を得るには、インターネットにも限界があり、やはり実業務に身を置いて、自分自身の経験を通して学ぶしかありません。
そのため業務知識を豊富に持っているということは、イコール経験豊富な証でもあるのです。
おわりに
民間系の開発と、公共・自治体系の開発では、少々求められるスキルが異なってきます。そのため長らく自治体系SEとしてやってきた技術者が、いきなり民間系の開発に従事するのは難しいかもしれませんし、その逆もまたしかりです。
公共・自治体向けの開発・保守業務にて、SEとしての市場価値を高めていきたいのであれば、”業務知識”をしっかりと身につけることを意識しながら、業務に取り組むようにしましょう。
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