日本のIT産業で働く外国人SEの数は、年々増加している傾向にあります。人口減少の進む日本においては、ある意味”必然”ともいうべき現象でしょう。

ただ外国人エンジニアというと、10年前には多くの人は中国人SEをイメージしていましたが、近年ではベトナムやタイなどの、東南アジア諸国のSEが増加している事実があります。

実際に経済産業省の調査でも、日本のIT産業で働きたい外国人SEの統計では、東南アジア諸国のITエンジニアの割合が非常に高く、それとは逆にインド人SEは日本でのIT産業への就労に対し、意欲的ではない旨の調査結果が公表されています。

(平成28年6月10日 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果の資料より抜粋)

 

今回は日本で働きたい東南アジア系SEと、日本では働きたくないインド人SEについて考察していきたいと思います。

東南アジア系SEが日本で働きたい理由

東南アジア系SEの中でも、近年日本での就労者数の伸び率が著しいのがベトナム人です。ベトナムは国家を挙げてIT教育に力を入れていますので、ITエンジニアの数も多いのでしょう。また当社のパートナー社でも、タイやミャンマーなどの技術者を雇用しているところもあり、確かに東南アジア系のSEは増加していると肌で感じることも多くなりました。

そこでなぜ東南アジア系のSEが、日本でのIT産業への就労に意欲的なのか、その理由を考えていきたいと思います。

1.給与水準が高い

まず東南アジア諸国の人から見れば、日本の給与水準は高いです。母国の水準で見ても、ITエンジニアという職業は他業種よりも賃金が高くなる傾向にあるのですが、それでも日本の給与水準と比較すれば劣ってしまいます。

同じ仕事をするのであれば、より多くの給与を貰える環境に身を置きたいと思うものです。第一に給与という面で、日本のIT産業に対して魅力を感じているのでしょう。

2.場所的に近い

場所的な要因も大きいです。ベトナムやタイなど、東南諸国の人たちからしてみれば、アメリカやヨーロッパ諸国よりも圧倒的に日本の方が距離的に近いです。

母国と距離が近いから何かあるわけではありませんが、もし母国で何かが起こった場合にも帰りやすいですし、距離的に近いという事実だけで、どこか安心感を抱くものです。

3.価値観・思想が近い

価値観などの考え方が日本人と合っていることも要因の一つとして考えられます。IT産業でシステムエンジニアといえど、技術力が全てではなく、結局は人と人とが関わっていく仕事です。そのため生活習慣や価値観については、できるだけ似通っていた国の方がストレスなく働くことができます。

日本も先にあげた東南アジア諸国も、どちらも礼節を重んじる風土とでもいうのか、思想信念的なものが似ているため、一緒になって仕事をしやすいパートナーとなれるのだと思います。

宗教という面で見ても、ベトナムやタイ、ミャンマーなどは主要な信仰は仏教ですし、そうした面でも価値観が似通っているということが言えるのではないでしょうか。

インド人SEが日本で働きたくない理由

日本で働く意欲の高い東南アジア諸国のSEとは対照的なインド人SE。場所的にも日本とそう離れてはいないはずなのに、日本では働きたくないという技術者が多いのはなぜなのでしょうか?

1.アメリカと比較してITエンジニアの給与水準が低い

冒頭で掲示した「各国のIT人材が働いてみたい国」の表をご覧いただくと、インド人SEが最も働きたいと思っている国はアメリカで、その割合も突出しています。

その理由としてはいくつかあるのでしょうが、まずは給与水準の問題が考えられます。インド人の平均的な給与水準は日本よりも圧倒的に低いのですが、IT産業に従事する技術者に限って言えば、その給与水準は日本とそう変わりはないのです。

つまり日本でSEとして働いたとしても、母国インドでIT産業に従事したとしても、金銭的な恩恵はそこまで変わりないのです。

対してアメリカはIT先進国だけあって、IT人材の給与水準はずば抜けて高いです。アメリカではITエンジニアの平均年収が一千万円を超えるというのですから、魅力的な条件となるのでしょう。

2.最先端技術を駆使するクリエイティブな仕事が少ない

インド人は賢い人が多く、優秀なエンジニアが多いイメージがあります。インドの教育において、理数系の教育やIT教育が発達していることが、優秀なエンジニアを多数生み出している要因となっているのでしょう。

そうした優秀な技術者であればあるほど、先端技術を駆使した仕事がしたいと思うはず。ですが日本はITに関しては世界基準で見ると後進国という位置づけになっているのが現状。最先端技術を駆使するクリエイティブな仕事を求めるなら、アメリカをはじめとした、イギリスや北欧諸国などのIT先進国で働きたいと考えるのではないでしょうか。

日本ではシステムエンジニアといっても、決められたタスクをこなすサラリーマン的な働き方が求められるため、挑戦的なことをしたい技術者にとっては、”やりがい”を感じる頻度も低くなってしまうのかもしれません。

3.言葉の壁(英語が通じない)

インドはさまざまな民族が集まった国家であり、民族ごとに多種多様な言語を話すのですが、同じ国内でいくつも公用語があっては、意思疎通が難しくなってしまいます。そのため正式な公用語としては、ヒンディー語と英語の二つが定められています。

以上のような経緯があり、インド人は英語が得意なのです(インド人独特の訛りはきついそうですが)。

日本でもグローバル化が進んでいるとはいえ、まだまだ英語に対して苦手意識を持つ人は多いです。仕事をするにも同じ言語でコミュニケーションが取れないことには、良い仕事もできません。インド人がわざわざ日本語を覚えるよりも、もともと英語が公用語のアメリカで働く方が、合理的でありスムーズに仕事に就くことができます。

言葉の壁というのも、インド人が日本を敬遠する理由の一つとなっていることでしょう。

 

おわりに

人口減少という問題を抱えている日本ですから、今後は外国人エンジニアが確実に増えていくことが予想されます。そして当面は東南アジア諸国のSEが急増するようになるでしょう。逆にこのまま日本のIT産業に進歩・改革がなければ、インド人SEのようにクリエイティブな仕事を求める技術者にとっては、魅力度は今以上に下がっていくでしょう。

どの国のエンジニアが多いから良い悪いということではありませんが、外国籍SEの動向を見ると、日本のIT産業のさまざまなものが見えてくることが分かります。