ソフトウェア界隈も、昔は”電子計算”や”情報処理”などと呼ばれていたものが、今ではITという言葉で表現されることも多くなりました。

IT産業が生まれたのはここ数十年であり、製造業や小売業などの歴史ある業界と比較すると、まだまだ最近始まった業界。それでもここ10年ほどを見ても変化してきたこともあるので、2010年ごろと2020年ごろを比較したIT業界の変化について、いくつかのジャンルに分けて書いていきたいと思います。

労働環境

まず労働環境については、ここ10年ほどで劇的に改善したと思います。IT業界の変化という意味では、とても大きな変化だったと言えるでしょう。

昔は納期を守るためには徹夜もいとわない屈強なエンジニアが大勢いました。かつてのエンジニアは精神疾患とはあまり縁がなかったのかもしれません(私自身この業界に身をおいたのが2008年頃のこと。それより前のレジェンド的エンジニアのことは話に聞く程度なので、そこまで詳しくはないのですが)。

ですがちょうど10年前ごろからでしょうか、IT業界はブラックだ! 長時間残業だからエンジニアになんてなるんじゃない! なんてことが言われるようになり(かつてから言われていたとは思いますが、より社会問題として扱われるようになり)、今では36協定含め、残業の抑制など労務管理に関しては非常にしっかりやっております。

むしろ小売業とか飲食業、その他業界の方がよっぽど長時間労働をしている印象です。かつてと比べてIT業界は非常にホワイトです。
・・それでもベンチャー界隈はまだまだ長時間労働が慢性化しているかもしれませんね。

開発環境

技術の進歩によってシステム構築は簡単になる一方で、開発環境はより一層複雑になっていくのはしかたのないものです。

もっと昔を言えば、システム開発といえば大型ホストコンピュータでの電子計算が当たり前(むしろそれ以外に選択肢がなかった)でしたでが、2010年ごろには既にクライアントサーバー型での開発が主流でした。

そこから10年を経て変わったのは、モバイルアプリ系の開発が加わったことや、WEB系の開発が多様化したこと、そしてAWSやAzureなどのクラウド環境を利用することになった点が挙げられます。

iPhoneが2007年に発売され、ゲームやコンシューマー系アプリだけでなく工場でのIoT絡みなど、iOSやAndroid環境でのモバイルアプリの開発案件も増えました。

WEB系の開発に関しては、デザインに関してはシンプルになった感はありますが、UIなどの表現方法はよりリッチになりました。またスマートフォンなどのプラットフォームの多様化も影響し、制作に関してはより奥深いものとなったでしょう。

2010年ごろは「これからはクラウドだ」なんて言われていたと思いますが、サーバー利用についてもAWSやAzureといったクラウド環境を利用することが多くなりました。もう自前のサーバーを持つ必要もなく、クラウド利用の流れは今後も加速するでしょう。

外国人エンジニア

日本で働く外国人エンジニアと言えば、2010年ごろは圧倒的に中国人エンジニアが多かった印象です。私自身も隣の席が中国人だったり、中国人エンジニアと連携しながら開発に取り組んでいたりしました。

ですが昨今では中国経済の発展とともに、中国人の人件費も高くなり、日本人としても中国人をメンバーに入れるメリット、中国人としても日本の開発プロジェクトに入るメリット、双方で享受できるメリットが薄くなり、日本で働く中国人エンジニアは減ってきております。

逆にベトナムやミャンマーなどの東南アジア系のエンジニアが増えてきております。

“日本に来て働く”ということだけではなく、開発工程を海外に委託するオフショア開発にしても、中国ではなくベトナムをはじめとした東南アジア諸国に投げることが多くなりました。

オフショア先の変遷については「オフショア開発の今後の動向について考える」の記事もご参考ください。

職業イメージ

ITエンジニアに対する職業イメージも変わってきたと感じます。

あくまで主観ですが、情報処理黎明期からの職業イメージの変遷は、以下のような感じではないでしょうか。

  • 40年前(1980年頃):新しい物好きの変わり者
  • 30年前(1990年頃):マシン、メカオタク
  • 20年前(2000年頃):頭のいい人が就く職業
  • 10年前(2010年頃):アニメとかネット好き
  • 現在(2020年頃):クリエイティブでイケてる

2010年頃は深夜アニメやネット文化が非常に盛り上がっており、システムエンジニアを目指す学生もアニメやネット好きな人が多かった気もします。

ですが昨今では大手ITベンチャーなど、エンジニア出身の企業経営者の活躍が話題になることも多く、クリエイティブでイケてる職業と認知されることも多くなってきていますね。確実に。

 

おわりに

2010年ごろから2020年ごろまでの10年間を見ても、変わってきたことは多いです。特に日進月歩といわれるIT産業ですから、業界内の価値観の変遷も激しいのかもしれませんね。