私たちソフトウェア業界の働き方としては、お客様先に常駐して開発業務に従事するパターンと、自社内に開発案件を持ち帰って開発を行うパターンの2つがございます。前者は派遣や準委任契約となり、後者は業務請負契約となるのが一般的。

個人情報の持ち出しが難しいという事情や、瑕疵担保責任などのリスクを回避するなどの理由で、割合としては客先常駐で開発を行うことの方が多いかもしれません。しかし当社の考えとしてもそうですが、技術力に自信のあるソフトウェア企業であれば、できれば社内開発を積極的に行いたいと思っているはず。

そこで今回は、ソフトウェア企業が社内開発を推進する理由について、ご説明していきます。

社内開発をすることで得られるメリット

業務効率化の意識が高くなる

社内開発を進めると、業務効率化の意識が高くなる利点があります。

なぜそのような意識が芽生えるのかと言えば、冒頭でご説明した契約形態の違いによって、利益計算の考え方も異なってくるからです。

客先常駐であれば、SEがお客様先に常駐するだけで、会社としては利益が出ます(お客様は成果物ではなく、技術者を借りることに対して費用を支払います)。極端な話、お客様との間で派遣契約を結んでいれば、特に成果物がなくても、毎月決まった額の利益が出るのです。

しかし請負契約で社内開発をするということになれば話は別です。請負契約であれば”技術者個人”ではなく、”構築するシステム”に対して売上げが発生するため、効率よくシステムを完成させることができれば、その分利益率も高くなります。

例えば1千万円で開発案件を請負ったとして、800万円の開発費用がかかれば200万円の利益です。しかし業務効率を高くして500万円の開発費用で済むことになれば、500万円の利益となります。システム開発にかかる費用はほぼ人件費になりますので、利益率を高くするには(開発費用を抑えるには)いかに業務効率を高くして仕事に臨むのかが肝になります。

利益率が高くなれば会社としても潤いますし、その分を給与として技術者に還元することも可能です。社内開発を進めることで、ダラダラと仕事をすることなく、作業効率を考えた働き方を浸透させることができるのです。(もちろん客先常駐であっても作業効率を疎かにしてはいけませんが)

新入社員の教育が容易になる

新卒で新入社員を採用した場合、大抵のソフトウェア企業では数ヶ月間、社内で技術研修を実施するものですが、いつまでも研修だけをさせておくわけにもいきません。

早く実務レベルの開発業務を経験し、本当の意味でのシステム開発を覚えていかなければならないのですが、お客様先に常駐する場合、お客様との面談をクリアしなければ開発に参画できないという事情があります。

先の項で説明したように、客先常駐の場合は、成果物ではなく技術者がその場にいるだけで費用が発生しますので、お客様としても技術力の乏しい新入社員を迎え入れることには難色を示します。多くの場合、お客様先で稼働している自社のチーム体制への増員ということで、どうにかこうにか開発プロジェクトに参画させていただくのが一般的。

ですが社内で請負っている開発案件があるのなら、まずは自社内の環境にて、実務レベルの開発業務を経験することができます。新入社員で技術力も乏しいため、もちろん開発コストは高くなってしまいますが、仕事を覚えさせるという意味では、それも必要な投資でしょう。

新入社員の仕事先に困っている企業も多いですので、社内開発を行っているというのは、人を育てるという意味でも、大きな強みとなるのです。

社員の帰属意識が高まる

お客様先で開発業務に従事しているとはいえ、私たちソフトウェア企業は派遣会社ではありません。目の前の開発業務だけが全てではなく、会社の目標というものを感じながら、それぞれが責任と役割をもって働いています。

しかし全社員が一つの場所に集まって仕事をするわけでもなく、社員同士が顔を合わせる機会もそう多くはありませんので、どうしても帰属意識のようなものが薄くなってしまいます。

そうした悩みも自社内での開発業務があれば、要件定義から納品までを社員が一丸となって行うこととなり、一体感のような雰囲気は生まれやすくなります。そうすると自然と帰属意識も高くなります。

帰属意識が高くなれば、生産性の向上や離職率の低下など、あらゆる恩恵をもたらしてくれることになります。

 

おわりに

ソフトウェア企業にとって請負での社内開発を推進するということは、技術者の調達問題や瑕疵担保責任の問題、そして下手をすれば赤字プロジェクトとなる可能性だってありえます。そうした様々なリスクが付きまといますが、今回ご説明したような利点を考えると、請負案件での社内開発をすることには、大きな意味があるのです。

 



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