受託開発の案件を請負い、喜んでいたのもつかの間、赤字になってしまった・・というのはよく聞く話です。赤字になる原因は、大きく分けると以下の二つ。
- プロジェクトの進め方が悪く、作業工数が膨らんでしまった
- そもそもの見積もりの金額自体が甘かった
赤字の原因が前者であれば「プロジェクトの炎上を防ぐなら「工程厳守」と「品質確保」を忘れるな」をご覧いただきたいのですが、後者なら見積もり額を算出する上でのポイントを学ばないといけません。請負作業に対する金額の見積もりは肝心で、プロジェクトを成功させるための第一の要所でもあります。
今回は受託開発案件で赤字を出してしまわないよう、見積もりのコツについてご説明していきます。
見積もりを算出する上で大事な二つのこと
ソフトウェア企業は小売店のように物を売っているわけではなく、技術力を売っています。最終的にはシステムとして納品物が生まれますが、目には見えない技術力に対して、見積もり額を算出しなければなりません。
技術力に対して値段をつけるのは容易なことではありませんが、お客様に見積もりを提出する際には、次にご紹介する点を意識してほしいと思います。
必要工数の予測は新米エンジニアを基準として算出
見積もりを算出するためには、まずはそのシステムが完成するまでに、どの程度の工数が必要になるかの予測を立てる必要があります。
そして工数を予測する際に意識することは、ベテランエンジニアをモデルとして工数を算出するのではなく、低スキルの新米エンジニアの作業スピードを基準とすることです。要は誰が作業を担当しても、想定工数の中で仕事を終わらせられるようにしなければなりません。
例えばベテランエンジニアが作業を担当する予定で3人日分の工数を見立てたとします。しかしベテランエンジニアが体調不良に陥ってしまい、代わりに新米エンジニアが担当することになれば、3人日では済まずに5人日かかってしまうかもしれません。このような状況になってしまえば、当初の見積もりは崩壊してしまいます。だからこそ最初から5人日分の作業として見積もりを立てておかなければならないのです。
作業単価はPG作業、SE作業それぞれで基準を決めておく
見積もりを算出する上で、工数とは別にもう一つ大事な要素が単価です。システムの値段は「必要工数 × エンジニア単価」で決まりますから、いくら工数を適切に積んだからといって、単価が適正でなければ、それも赤字プロジェクトとなる要因となってしまいます。
単価については先に説明した工数計算の時とは異なり、新米エンジニアの作業単価を基準にしてはいけません。新米エンジニアは作業単価も安くなるため、もし高単価のベテランエンジニアが作業することになれば、赤字を叩き出してしまいます。「誰が作業をしても利益が出るように」を考えるなら、PG作業、SE作業それぞれで基準単価を用意しておくべきでしょう。
中小規模のソフトウェア企業なら、PG作業なら60万円/1人月、SE作業なら80万円/1人月といったところが妥当な数字ではないでしょうか。このように基準を決めておくと、見積もりごとに金額がぶれることがなく、お客様に不信感を抱かせることもありません。
もっと言えば外注しても利益を出せること
これまで社内のエンジニアで開発することを前提に話をしてきましたが、もし外部の協力会社に外注するのであれば、その分の利益も考慮しなければなりません。
例えばPG作業を60万円で請け負ったとしても、60万円で協力会社に発注していては何の意味もありません。発注する側も管理としてコストが発生するわけですから、その分も見積もりに含めるのが鉄則です。
この場合はPG作業なら80万円/1人月、SE作業なら100万円/1人月ぐらいの水準で見積もり額を算出するとよいでしょう。
おわりに
工数については新米エンジニアの作業スピードを基準にする。単価についてはPG作業、SE作業ごとに標準の単価を決めておく。これを守らないと、システム開発を請け負ったのに赤字になってしまった・・という悲惨な結果を招いてしまう恐れがあります。
低予算での見積もりを提出し、お客様に喜んでもらったとしても、赤字になってしまっては何のために仕事をしているのか分かりません。なのでプロジェクトを成功に導くための要所となる見積もり作業は、より一層シビアな目線で算出するようにしましょう。
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