どんなプログラムやシステムにも、初めてお客様環境で動き出す瞬間があると思います。システムエンジニアたちはその瞬間のために工程や品質を意識しながら日々ものづくりに励んできたわけですが、本番稼動を迎えたときは決して喜びに満ち溢れているわけではありません。
今回はそんなエンジニアの心の中の思いについて、お話していきたいと思います。
もちろん喜びもあります
「喜びだけではない!?」というタイトルをつけておきながら、まずは喜びについての説明をさせてください。
今まで一生懸命作ってきたものが自分たちの手を離れ、お客様のもとで動き出し、世の中のためになることは、エンジニアだからこそ味わえる喜びかもしれません。まさに自分が磨いてきた技術力が役に立つ瞬間です。
それに上流の設計工程から開発に従事していればいるほど、その喜びもひとしおでしょう。辛い思いも多かったかもしれませんが、いつかはそれも良い思い出となるはずです。さらにお客様から感謝の言葉をいただければ「本当にシステムエンジニアになって良かった」と、”やりがい”を感じることもできます。
本番稼動日はエンジニアにとっての晴れの舞台とも言えるわけですが、次にご説明するように、きっと多くのエンジニアは”喜びいっぱい”というわけではないと思います。
喜び半分、不安半分
本番環境で自分たちが構築したシステムが動き出す日のエンジニアの心境は、喜び半分、不安半分といったところが本音ではないでしょうか。
「バッチ処理がこけたりしないだろうか」とか「演算結果が間違っていないだろうか」など、不安に思うことをあげればキリがありません。もちろんエラーが発生してお客様の業務がストップすることのないように、入念にテストを行ってきてはいるのですが、それでも不安な気持ちは払拭できないものです。
社内環境とお客様環境の違い
ばっちりテストを行っても不安な気持ちを払拭できないのは、社内環境とお客様環境という、環境の違いも要因の一つとなります。
システムは同じであれど、環境が変わればその動きが変わってくることもあります。もちろんプログラムなので結局はプログラマーが書いた通りにしか動かないわけですが、案外デリケートな代物なのです。
クラサバ型のシステムであれば、お客様のネットワーク環境やクライアント機のメモリ要件、アプリケーションのバージョンなどにも影響されてきます。また他システムとデータ連携するようなシステムであれば、実際連携させてみたら想定外のデータが送られてきたなどで、不具合を起こしてしまうこともあります。
事前のシステムテストも単体テストだけではなく、連結テストや総合テスト、お客様環境での現地テストなどをこなしておりますので、理論上は不具合を起こすことはありません。しかしそれでもお客様環境では想定外のことも発生しやすいため、どうしても不安の種となってしまいます。
あとは何事も起こらないことを祈るだけ
どうしても不安な気持ちはわいてしまいますが、不安になったところでどうすることもできません。あとは何事も起こらないことを祈るだけです(祈ったところで何か変わるわけでもないですが・・)
余談にはなってしまいますが、もしトラブルが起きた場合は、なぜトラブルが起きてしまったのかを考えるよりも、まずは事態の終息にむけて、最善の行動をとることを大事にしましょう。
※「システムトラブルの発生時にSEが取るべき対応とは」参照
ようやくリリース日を迎えたことへの安堵感も多少
喜びや不安でいっぱいになる本番稼働の日ですが、ようやく辛かった開発プロジェクトが終わる安堵感も多少出てきます。肩の荷が下りるというか、「ほっとする」感覚のようなものです。
この安堵感はプロジェクトが辛いものであればあるほど大きくなるのではないでしょうか。プロジェクトが炎上してしまうと、残業が増え、エンジニアにかかる負荷も高くなってきます。ときには徹夜でのリカバリー作業で家に帰れない日もあるかもしれません。
本番稼働を迎えたからといって、決して「気を抜いていい」というわけではありませんが、「辛い日々もようやく終わるんだ」という気持ちとともに、どこかほっとするのも本番稼動を迎えた日なのです。
おわりに
エンジニアが何を思ったところで、プログラムは機械的にしか動いてくれないわけですが、エンジニアの開発にかける情熱が大きければ大きいほど、本番稼動当日はさまざまな思いがこみ上げてくるものです。
そしてその感情は喜びだけでなく、多くのエンジニアは同時に不安も感じているのではないでしょうか。ですがそれは決して悪いことではなく、不安を感じるからこそ、プロとしての責任のある仕事をしてきたと言えるのでしょう。
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